遺伝のがんについて
がんは遺伝する病気？
正確に言うと「いいえ」ですが、がんという病気が遺伝するのではなく、がんのなりやすさが遺伝することがあります。
がん患者さんの10％程度の方が、生まれつきがんになりやすい遺伝子の変異を持っていると言われています。例えば、卵巣がん：15％近く、大腸がん：5％など、がんの種類によっても異なります。
生まれつきがんになりやすいとはどういうこと？
がんと関連した遺伝子
私たちの細胞は日々傷ついており、それが「がん化」に関連する場合もあります。
しかし、人の体はすごいもので「がん化」しないように、がん抑制遺伝子たちが働いてくれます。
遺伝子は父由来と母由来で子へ受け継ぐため、がん抑制遺伝子は２つずつ細胞の中に存在しています。そして片方がなくなっても、機能しなくなっても１つあればがんを抑制することができます。
このように２つとも機能しなくなると細胞の無秩序な増殖を止めることができなくなり、「がん化」が起こります。生まれつき、がん抑制遺伝子が1つしかない（機能していない）人もいます。その場合、がん抑制遺伝子が1つしかないため２つある人よりも早い時期に機能しなくなる可能性があります。
遺伝性腫瘍症候群（遺伝性のがん）とは
どのような時に遺伝性腫瘍症候群を疑うか
- 血縁者内に各遺伝性腫瘍症の関連がんが複数名いる
- 血縁者内に若年発症のがん患者さんがいる
- １人の人が複数のがんに罹患する
※肺がんは遺伝性ではありませんが、愛煙家が多いなど家族性（環境要因が影響する）がんはあります。
遺伝性腫瘍症候群の種類
数十種類の遺伝性腫瘍症候群の原因遺伝子が解明されてきています。４つの遺伝性腫瘍病を紹介します。
家系図を書いてみましょう
乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵がんなど、HBOC（遺伝性乳がん卵巣がん）などと関連した腫瘍に罹患された血縁者の方がいらっしゃいます。がんの種類が違っても遺伝性のがんの可能性はあります。ご心配であれば遺伝外来に相談してください。
肺がんは遺伝的な要素が少ないため、遺伝性のがんのリスクは高いとは言えないでしょう。ご心配があれば主治医に相談してください。
遺伝性腫瘍症候群と診断されると？
- がん予防（リスク低減手術）、がんの早期発見につながります。
- 放射線が影響することがあるため、画像検査はCTよりもMRIを活用します。
- 遺伝子自体を治療できる方法はまだありません。
- 血縁者で遺伝子の変化を共有する場合があります（「知る権利」「知らないでいる権利」）。
診断されることを「メリット」と考える、「デメリット」と考えるなど、人の価値観は様々です。
遺伝カウンセリングでは医学的根拠のある説明を行い、検査を受けるか・受けないか、陽性だった場合どうすると良いのか一緒に考えます。